プロダクション・ノート

3人の家族の土台が出来上がったリハーサル
撮影前、藤村監督のもと棚橋と寺田が2週間のリハーサルを実施した。藤村監督は棚橋には、「演技らしい演技よりも、なるべくそのままでいてほしい」と話す。一方、棚橋は滑舌をよくするために、早口言葉集や「外郎売り」という古典的な発音上達台本を練習するなど初心に戻って頑張ったが、何よりも棚橋と寺田の演技力をアップしたのは、リハーサルの最後の2日間に参加した木村の存在だった。藤村監督は木村に、「詩織は、いろいろ悩みはあるけれども、腹を決めている女性で、この家族を支える柱です」と説明していた。木村は役柄としてだけでなく、まさに存在そのもので柱となってくれたのだ。
衣裳合わせで“役作り”を果たした二人のキャスト
衣裳合わせが“役作り”となったのは、仲と大泉だ。仲にはオタク感が欲しかったので、メガネはマストだった。黒髪のウィッグも付けてもらって、プリントが絶妙のTシャツとジーンズで仕上げている。
大泉は、「自分がこういう役どころで呼ばれたからには、求められることを普通にやるよりも、かき回すというか、とにかく面白くしたい」と、衣裳合わせでも自らいろいろなアイディアを出している。用意された雑誌の編集長らしいおシャレな衣裳など何着かを試着し、「ボロボロの服でいきたい」というのが大泉の結論だった。その結果、藤村監督が「脚本を書いた時には、こんな人物では全くなかった(笑)」という斬新なキャラクターが誕生した。
座長の熱意と3人のトップ俳優の実力
クランクインの前日、棚橋の申し入れにより、トレードマークの長髪を断髪する。理由は、「普通の父親になりたい」から。座長として、棚橋のこの映画に対する熱意は尋常ではないことが、改めてわかる。クランクイン当日から、棚橋なのか? 大村なのか? とオーバーラップする演技が白熱し、スタッフや共演者にも気合が入る。
レスラーでは、田口が芝居は初めてだったのだが、プロレスを知らないスタッフに「いい役者がいる」と勘違いされるほどの演技を見せる。オカダは、普段から慣れているはずの記者会見のシーンを、恥ずかしがりながらも見事に演じていた。
大泉のシーンは、アドリブの連続。「でもそれが、的確で面白くて。ほぼすべて使わせてもらいました」と藤村監督。大谷亮平は、撮影のその日に棚橋と初めて会ったのだが、できる限りのコミュニケーションを図っていた。藤村監督は、「“長年の友人”感がスクリーンに出ていたのは、さすがでした」と指摘する。
寺脇康文も途中で、「こういう台詞を言いたい」と提案、「短いシーンに、皆さんが一生懸命に魂を注いでくださったのがうれしかったです。脚本に書いた人物像を、皆さんの力でさらに深めてくださいました」と藤村監督は感謝する。
プロレス愛が炸裂するこだわりの試合シーン
試合のシーンは、プロレスファンが観ても、納得するものにしなければならない。同時に、リングの上からなど、実際のプロレス中継では撮れない、映画ならではの角度の映像も意識している。
観客に扮するエキストラもプロレスファンを集めて、大いに盛り上がってもらった。原作者の板橋雅弘も、入場曲を作ったFLOWのTAKEもエキストラとして参加している。
レスラーたちは、早朝からハードな撮影をこなしている。試合中はアドレナリンが出ているので、興奮状態で、終わるまで駆け抜けるが、試合シーンの撮影となると通常の試合のようにはいかない。だが棚橋は、「何回でもフライハイを飛びますし、どんな技も受けるし、どんな状況でもゴキブリマスクのファイトに徹します」とスタッフに約束した。
遂にクランクアップを迎え、メイキングカメラにコメントを話す棚橋の目に涙があふれる。慣れない環境のなか、プロレスと同じくらいの愛情で真剣に取り組んで、感無量だったようだ。「40を超えて、未だ挑戦できることがある幸せ」と語る姿は、もはや俳優そのものだった。
強いメッセージと優しいメロディが共存する主題歌
主題歌は、藤村監督もデビュー当時から大ファンだという高橋優に依頼された。メッセージ性の強いアーティストがいいというプロデューサー陣の希望もあり、高橋の声と歌で、この映画を締めくくってもらうのが一番いいという判断だ。
ハートウォーミングなメロディで、プロレスとファミリーという映画のテーマを表現してほしいというオファーに対して、「ありがとう」という曲が届いた時、プロデューサー陣と藤村監督は、「これだ!」と歓喜した。