クランクインの前日、棚橋の申し入れにより、トレードマークの長髪を断髪する。理由は、「普通の父親になりたい」から。座長として、棚橋のこの映画に対する熱意は尋常ではないことが、改めてわかる。クランクイン当日から、棚橋なのか? 大村なのか? とオーバーラップする演技が白熱し、スタッフや共演者にも気合が入る。
レスラーでは、田口が芝居は初めてだったのだが、プロレスを知らないスタッフに「いい役者がいる」と勘違いされるほどの演技を見せる。オカダは、普段から慣れているはずの記者会見のシーンを、恥ずかしがりながらも見事に演じていた。
大泉のシーンは、アドリブの連続。「でもそれが、的確で面白くて。ほぼすべて使わせてもらいました」と藤村監督。大谷亮平は、撮影のその日に棚橋と初めて会ったのだが、できる限りのコミュニケーションを図っていた。藤村監督は、「“長年の友人”感がスクリーンに出ていたのは、さすがでした」と指摘する。
寺脇康文も途中で、「こういう台詞を言いたい」と提案、「短いシーンに、皆さんが一生懸命に魂を注いでくださったのがうれしかったです。脚本に書いた人物像を、皆さんの力でさらに深めてくださいました」と藤村監督は感謝する。